ドラクエ11Sを裏ボスの裏ボスまで倒した話

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 ドラゴンクエストシリーズが先日35周年を迎え、その一環でシリーズが一斉に安売りセールをやっていたことと、ナンバリング最新作でかつユーザー評価(というか自分の相互フォロワーたちの評価)が高かったため、『ドラゴンクエスト11S 過ぎ去りし時を求めて』を遊んだ。

 事前に説明しておくと、私はドラクエシリーズを遊んだことがなく、また関連作品やコンテンツにほとんど触れずに来たため、本当にまったく知らない状態でのプレイとなった。

 今回は、その感想をツイッターでつぶやいた内容などを添えて話していきたい。

 

 

 

RPGとして

 ドラクエシリーズをまったく知らない人間であった私でも、ドラクエが日本にコンピュータRPGの概念を持ち込んだ作品のひとつであることは知っている。ビデオゲームの歴史をたどれば絶対に目にするレガシーであることに疑いはない。

 だが、レガシーと言えど今やビデオゲームには様々なジャンルがある。

 コマンドRPGというのはどちらかと言えばオールドで、アクションRPGシミュレーションRPG不思議のダンジョン系など様々な発展を遂げたジャンルがある以上、今プレイしたところで面白く感じるだろうか。そういう侮りや不安がなかったと言えばウソになる。

 しかし、プレイしてすぐにわかった。ドラクエは古い要素を使ってはいるが、ただ古いのではなくいわば老舗なのだと。

 勇者として生を受け、世に出て、敵を倒し、経験値を得て、レベルを上げ、資金を払って強い装備を整え、新たな技と能力でより強い敵を倒す。そのサイクルをもっとも有効に生かすにはどういうデザインが必要なのか。長年の経験に裏打ちされた確かな面白さがそこにはあった。

 そういうゲームだとわかっていても、レベルが上がったときは興奮したし、さっき苦戦した相手を簡単に倒せるようになったときはもっと興奮した。

 話は変わるが、落語には古典という演目の種類がある。これは江戸時代から途切れず語り継がれているネタのことだ。では、なぜ今現在でも演じられ親しまれているのかというと、それはそのネタの出来が良いからだ。多少演じる人間の腕が落ちても話の出来がいいので、時代を経ても聴いていられる。

 それと一緒で、ドラクエの遊びというのは元々のゲームデザインが優秀なため、多少アレンジを加えても楽しめるようにできているのだ。

 ビデオゲームがこの世に生まれてから40年ほど経とうとしているが、その時代にこの古典に触れることができたことはひとつとても良いことだったと思う。

 …………とは言え、アイテムは各々に持たせないと戦闘中に使えないことぐらいは説明欲しかったな。

 

 

②ゲームシナリオ

 勇者として世に生まれた主人公が、使命に従い大国に赴いたら『悪魔の子』と忌み嫌われ追われる身となってしまった。自身の勇者の使命とはなにか、なぜ『悪魔の子』と呼ばれるのか、それを旅の中で探していく。

 と、ざっくり言えばこういう話だ。どうやらドラクエシリーズの基本的なテンプレとしては勇者と呼ばれる主人公が王様の指示で世界を救う旅に出るというものがあるらしく、シリーズ既プレイ者からしたら『悪魔の子』と呼ばれることは意外な展開だったのかもしれない。

 が、先述の通り完全初見の私はやたら勇者と祭り上げる人々を見て「これそんなうまい話ある?」と思っていたので、その展開には案の定そうなったかという気持ちだった。

 中盤ぐらいからどうやらその『悪魔の子』というのは勇者を恐れる魔物サイドが吹聴していたことだったらしく、仲間たちからは主人公は正しく勇者で、この世界を救う者であると言われる。

 といった感じでこの辺りまでは正直割と予想できた範囲の話だったため、取り立てて感想はあまりないのだが、世間が冷たい中、仲間たちは主人公に肯定的なのはうれしい点だった。

 このまま終わったらいやだなぁと思っていたところで、黒幕が姿を現し一度世界を徹底的に破壊しつくす。

 散り散りになった仲間たちが再起していく様子や、それまで敵対していた大国の戦士と共同戦線をはり黒幕に支配された世界各地を奪還するなど、王道ながら燃える展開が続く。このあたりになると黒幕に対する殺意も高まっているので、「ぜってえ世界救ってみせるからな!」という気持ちと主人公一行の目的がシンクロしてくる。

 最後は散っていった命に報いるために黒幕と決着をつけて世界を救う……というすごく全うな最終決戦で物語はひとまず幕を下ろす。

 ゲームに限らず物語というのはどれだけ人物に共感できるかがすごく大事なため、そういう意味で王道な話を書きつつもプレイヤーをしらけさせることなく、主人公たちとシンクロさせるだけの構成は実はとんでもないことをしているのではないかと思う。

 かと言えば、実は世界が破壊されたときに長い間旅を共にしてきた仲間が、主人公たちを守るために命を散らしていたという事実が明かされるといった、ところどころで衝撃的な内容を見せてプレイヤーを引き込む工夫がされている点も素晴らしいところだ。

 これは好き嫌いある点だと思うが、まじめな場面でもところどころギャグが挟まる。どれも過剰ではなくスパイス程度に収まっているので、個人的には嫌いじゃなかった。

 

 本編をクリアすると追加ストーリーが遊べるのだが、その内容というのが世界崩壊時に命を散らした仲間を救うため主人公のみタイムスリップして過去改変するというもの。

 本編のIFストーリーを楽しめる構造なわけだが、この追加ストーリーは個人的に納得しがたいというか、共感しづらいものだった。

 現代的な言い方をすれば『解釈違いだった』と表現できるだろう*1

 物語には盛り上がる場面というのが基本的に必要であって、それはその作品全体の評価を決めることにもつながる大事なファクターである。

 それがどういうものかはジャンルによって色々変わるが、例えば……

・ロボットアニメで言えば『主役機の交代』

・推理モノで言えば『探偵が推理を披露し、犯人を言い当てる』

・恋愛モノで言えば『告白が成功し、恋愛が成就する』

・スポーツ漫画で言えば『ライバルとの試合』

 とこういった感じだろう。

 ドラクエ11Sの場合は盛り上がる場面はたくさんあったが、『黒幕の罠に落ちて一度世界が徹底的に崩壊してしまう』場面は間違いなくその一つと言えるだろう。

 で、その絶望的な流れで仲間達と合流し、救えた命、救えなかった命、すべてをかけて黒幕と戦うというのが本編の特に面白い点であると私は考える。

 …………なのだが、追加ストーリーではそのカタストロフを未然に防いでしまう。そのため先述したように仲間の一人がこの場面で命を散らすことはないし、世界の崩壊は起きない。せっかくの盛り上がりどころが消えてしまったことで、私の気持ちとしては以下のツイートに集約される。

 これは私個人の趣味嗜好なのだが、道半ばで死んでしまうキャラクターや、闘争に負けて願いが叶わなかったキャラクターなどは、その最後を含めてそのキャラクターであるし、だからこそ愛おしいと感じる。

 ドラクエ11Sで言うと、仲間を守るために殉職したというのがそのキャラクターの美しさであり、キャラクター性であり、思い入れなのだが、それがなくなってしまった以上、そのキャラクターの良さが損なわれてしまったように感じたのだ。

 それだけならまだいいのだが、裏ボスを倒すためにかつて冒険した地を再び訪れると、世界崩壊後の世界で起きた悲劇を結果的に未然に防ぐ展開が続くので、だいたいの登場人物が救われるものの、私の趣味嗜好的になんか腑に落ちないという気持ちになった。

 同様の理由で『ゼルダ無双 厄災の黙示録』についても個人的には低評価気味である。*2

 とはいえ、どんなにご都合主義でもハッピーエンドが好きという層もいるので、どちらが良くてどちらが悪いということでもないんだろうけど……。

 一流の悲劇より三流の喜劇という至言もあることだし。

 

 

③キャラクターについて

 勇者パーティについて思い出や思ったことなどを書いていく。

 

 勇者

 

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 悪魔の子の名を受けて、故郷を捨てて戦う男。

 デビル序盤は回復要員。

 デビル中盤は物攻要員。

 デビル終盤は渾身斬り。

 デビル追加ストーリーはアルテマソード。

 プレイヤーの分身ということで、キャラクター特有の意思表示することがあまりない御仁。

 回復・物理攻撃・魔法攻撃どれをとってもまあまあ活躍し、まあまあ足が速く、まあまあ耐久力が高いということで、基本的にパーティから外すことなく、活躍することが多かった。

 王道を行く主人公だったので、特に不愉快な気持ちにならずに感情移入できた。

 

 

 カミュ

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 最初に仲間になる相棒ポジションの盗賊。

 預言者とかいうクッソ胡散臭い人の信託に従って体が金になってしまう呪いから妹を救うために勇者と冒険するという話からして重いんだよお前!

 とはいえ、性質としてはパーティのよきツッコミ役・苦労人ポジションであり、主人公(≒プレイヤー)への好感度が初っ端から高いので、夢女子になった人は多そう。

 ゲーム的にはアイテムを盗めたり、足が速かったりで、本編クリアまで安定して使いやすかった。終盤は会心必中により数ターンはダメージソースとして活躍することもあった。

 最初の仲間が彼で良かったと、素直に思えるキャラクターだったと思う。

 

 

 ベロニカ

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 気が強めな黒魔導士系の合法ロリ

 攻撃魔力が馬鹿高く、数々の攻撃魔法で幾多の屍を築いたミス破壊神。単純火力ではナンバーワンで、ボス戦でも非常に頼れたけど耐久はお察しだったため、他の仲間が常に復活役として張り付いていないといけない状態だった。

 キャラクターとしては気が強く、態度の悪い相手にだいたい食って掛かるので、ドMの人には人気かもしれない。ただ、ロリというだけあって、所作はいちいち可愛いので、愛玩動物的な意味で結構好きなキャラだった。ぬいぐるみとかそういうグッズない? ないですかそうですか。

 本編中盤から追加ストーリーまで離脱するため、ショックが計り知れなかったのは多分全人類共通だと思う。

 

 

 セーニャ

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 おっとり族白魔導士系の女性。

 回復魔法をたくさん覚えるため、双子の姉のベロニカと一緒に加入してからはパーティの回復役を一手に引き受けていた。

 それ以外取り立てて強い印象はないけど、シナリオでは天然発言があったり、女性のパブリックイメージ的にスイーツが好きだったり、魅力的なところはあったと思う。

 ベロニカの死を受け入れ覚醒するイベントが終盤あるが、そのころにはもう使うPTがある程度固まっていたうえ、再加入時期の都合レベルが低かったため結局裏ボスと追加ボスを倒した後の最終ボス戦でベホマズンするだけのマシーンになってしまった。哀れ。

 

 

 シルビア

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 騎士道を重んじる希望の大道芸人

 俗にいうオネエであり、作中屈指のぐう聖。彼がいなかったら話が全体的に重すぎて辛かったに違いない。初見時にはあまりにも主人公に友好的だし、馬を召喚する鈴くれたり船出してくれたり、強いしで「いつか裏切るんじゃないか」と思っていたが、最後まで『世界中を笑顔で満たす』という目標がブレなかった漢の中の漢。ギャグもこなせるので、はっきり言ってシナリオ的に隙がない名キャラクター。

 戦闘面では多少パワーが足りないと感じるところもあったが、全体回復のハッスルダンスが低燃費で使いやすかった。

 とはいえ、さすがに追加ストーリーではパワー不足だし、バッファーとしても中途半端だったので二軍だった。ツッコミによる状態異常回復は便利だったけど。

 

 

 ロウ

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 勇者一行の知恵袋にして主人公の祖父。

 亡国の王様だったことと最高齢とだけあって世界情勢に詳しく、黒幕の存在を主人公たちに提示した活躍や、各地の有権者と顔見知りなことでシルビアと並んでシナリオ的にかなりウェイトのでかい存在。その一方でエロ本を持ち歩いている助平な一面もあって、コメディもこなせる。基本的に孫である主人公を可愛がるおじいちゃんなので、嫌いになる要素がない。

 彼のメインストーリーで在りし日の彼の生活が垣間見られ、また幻覚としてありえたかもしれない未来をプレイヤーも見せられる。その場面は本当につらく、彼が失ったものが多すぎたことがわかるので、そこでとても彼のことが好きになった。同時に、それを奪った連中に対する怒りもまた芽生えることに。

 ゲーム的にはMPが高く、攻撃・回復魔法をまんべんなく覚えるためかなり便利だった。体力が低い点はご愛嬌。また、相手にかかったバフを全部なくす零の洗礼という特技が超便利だった。これなかったらたぶん最後までプレイできなかった。

 表ボスとの決戦も、裏ボスとの決戦も、最終ボスとの決戦も、最後の最後まで活躍してくれた。

 

 

 マルティナ

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 お色気担当にして格闘娘。

 主人公の幼馴染になるはずだったけど色々あって年上のお姉さんポジションに収まった。主人公を悪魔の子呼ばわりした王様の娘(つまり王女)というこれまた激重設定の持ち主だが、敵の幹部的な人に洗脳されてバニーガールになっていた印象が強い。

 その場面では洗脳された彼女と幹部的な人と2連戦になるのだが、幹部的な人との戦いがこのゲーム中3番目くらいに苦戦したところだった。…………これマルティナの感想じゃねえな?

 ↓幹部の人

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 ゲーム的にはぶっ壊れ経験値獲得技のためだけに使っていたので、戦闘方面での活躍はほとんどナシ。最終ボス戦で味方へMP回復アイテム投げつけるだけの仕事だった。

 

 

 グレイグ

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 勇者の盾となる王国の騎士。

 先述した共闘する大国の騎士で、元々彼は主である王様の命令で主人公を追っていたのだが、その王様が黒幕によって闇落ちしていた事実を知ると、その誤解を謝罪し共に戦うことを誓ってくれる騎士の鑑。

 彼もまたコメディシーンがいくつかあるが、やはり印象的なのは黒幕の力に魅せられて敵の幹部へ堕ちた親友との絡み。お互いがお互いをうらやましく思い、自分は影だと思い込んでいたすれ違いによって結果的に殺し合いを演じなきゃいけなかったという事実には涙を禁じ得ない。こういう関係をオタクは好きなので、当然私も好き。

 また、歴史改変後の世界でもその親友との別れは変えられない歴史であり、その面では彼の魅力が損なわれなかったと思う。改変前の完全に堕落した親友に対して止められなくてすまなかったと謝罪する場面も、改変後のお互いがお互いをうらやましく思っていたことを告白し友情だけは変わらぬまま永遠の別れになった場面も、どっちも別ベクトルで美しい。

 最後の加入とだけあってかなり強く、いわゆるメイン盾の役割。体力・防御力ともに高く、彼が耐えてなかったらパーティ全滅していたという場面もしばしばあった。

 単純な物理攻撃力も高く、自分にターゲッティングを集めダメージを肩代わりする特技があるため加入してから最後までずっと重宝していた。追加ストーリーは彼がMVPだろうというぐらい大活躍だった。

 

④その他

 ほかに項目するようなことが思いつかなかったので、雑記する。

音楽

 すぎやまこういち先生が音楽を手掛けているだけあって、やはりクオリティは良かったと思うが、フィールド曲がほとんどの場面で同じなので、正直そこだけはどうにかしてほしかった(すぎやま先生が悪いわけじゃないけど)。

 特に印象に残ったBGMはない。これはただの言い訳になるが、初見のゲームではゲーム部分に集中しちゃってBGMを楽しむ余裕が昔からない。なので、ツイッターでフォロワーたちがどこそこのゲームのどこそこのBGM良かったよねーという話に混ざれない。悲しい。

 

グラフィック

 PS4版からグラフィックの質はある程度落としているらしいのだが、別にこのままでもじゅうぶんじゃないかと思うぐらい綺麗に感じた。

 

UI

 メニュー画面や戦闘画面のUIはシンプルで使いやすかったと思うけど、ドラクエシリーズで一般的らしい仕様の説明なんかは自分でTIPSを見ないとわからないことがあったので、その辺はさすがに今更11Sやるような奴は過去作プレイ済みだろということだろうか。

ドラクエまったく知らないことがわかるツイートらしい

 結局最後まで「〇〇のいき」が魔法判定なのか物理判定なのかそれ以外なのかわからなかったし、モンスター種族ごとの弱点・耐性がどういったものなのか直感的に理解できなかった。それ以外にも細かい仕様がわからないままだったりする。

 あと個人的にちょっと不満なのは、戦闘中に控えキャラクターがどんな魔法や特技を持っているか見られなかったこと。メインのみんなが状態異常になっているから控えから出して一気に治そうと思っても誰が何を持っているか見られないので、結局総当たりに出して回復したという場面が多発した。いやまあ覚えとけって話なんだけど。

 

 

⑤終わりに

 と、いうわけで『ドラゴンクエスト11S 過ぎ去りし時を求めて』の感想記事でした。

 不満がないことはなかったけど、それを補って余りあるほど楽しくプレイできました。

 今の時代に小細工一切なしの骨太ストロングスタイルなコマンド式RPGを遊べて本当に良かったと思います。

 今のところ過去作を遊ぶつもりはないですが、12がいずれ出るらしいので、それは出たら遊ぼうかと思います。でも熱心なプレゼンがあったら遊んじゃうかも。

 本編外伝問わずオススメのドラクエシリーズがあったら教えてくれよな! みんなの募集待ってるぜ!

 終わり。

 

 

*1:ちなみに私は『解釈違い』という言葉があまり好みではないが、本筋ではないので理由は控える

*2:本筋と関係ないのでこれ以上の言及は避ける